じげんのサステナビリティ|専門家ゼロから始めた、ESG開示の基盤づくり——サステナPJT3年間の歩み
2023年、じげんに部署横断のプロジェクトが発足した。広報・総務・IRから集まったメンバーによる「サステナビリティプロジェクト(以下、サステナPJT)」だ。ESG情報の開示義務化という外部環境の変化を受け、TCFD対応やサステナビリティ委員会の設立、ESGデータブックの作成など、上場企業として求められるESG開示の基盤をゼロから構築してきた。
専門人材がいない中で、どうやって体制を整え、運用を定着させたのか。そしてこの取り組みは、じげんにとってどんな意味を持つのか。約3年の歩みを、広報サステナビリティ推進室室長の杉原がプロジェクトメンバーに聞いた。
※サステナPJTのメンバーは、2024年に設立されたサステナビリティ委員会の事務局を担っています。
※じげんのESG情報:https://zigexn.co.jp/ir/esg/
※ESG Data Book:https://zigexn.co.jp/ir/integrated_report/
ゼロからの出発。専門家不在で挑んだESG開示の基盤づくり
まずは皆さんの自己紹介と、プロジェクトでの役割を教えてください。
東江:私は2020年にじげんに新卒入社しました。現在は経営管理部でIRを担当しており、プロジェクトではIRの立場から、投資家へのヒアリングや開示対応などを担当しています。
伊藤:経営管理部で総務を担当しています。プロジェクトでは主に「E(環境)」領域を担当し、電力使用量をはじめとする環境データの収集・整理を行っています。
鈴木:私は2023年にじげんに新卒入社し、広報サステナビリティ推進室に所属しています。入社前の内定者インターン時代からこのプロジェクトに関わっており、役割としては、全体の進捗管理やフレームワークの整理、各部署への協力依頼と取りまとめなど、プロジェクト全体の推進を担っています。
サステナPJTはどのような経緯で立ち上がったのでしょうか。
鈴木: 背景としては、有価証券報告書でのサステナビリティ関連情報の開示が義務化されたことが大きいです。上場企業として対応が必須となる中で、まずは社内で体制を整えようということで動き始めました。
自分たちで調べて形を作り、ある程度まとまった段階で先行している他社にヒアリングに伺って答え合わせをする、というのが実際の進め方でした。
専門家がいない中でのゼロからのスタートで、特に苦労したことは何でしたか。
東江: IRの立場から申し上げると、ESG投資家の比率が増加しているという認識はあったものの、投資家と直接お会いする機会が限られる中で、「ESGのどの領域に関心を持っているのか」を把握することが最初の壁でした。
TCFD、CDP、S&Pといった略語やフレームワークが数々とある中で、どれが自分たちに関係するのかを整理するところから始める必要がありました。 元機関投資家などにお話を伺いながら、少しずつ全体像をつかんでいきました。
伊藤: 私は環境データの開示で、電力使用量の排出係数の算出方法が正しいかどうかが分からず苦労しましたね。前職で培ったエネルギー領域の知見を活かしつつ、当時の協力会社の方にも確認を取りながら進めました。
また、日頃から電力使用量のデータを自主的に記録していたので、開示に必要な数値をすぐに揃えることができました。グループ会社の皆さんも迅速にデータを提供してくださり、環境データの開示がプロジェクトの中で最も早く形になったのは、こうした地道な蓄積のおかげだと感じています。
鈴木: 伊藤さんが集めてくれていたデータがなかったらもっと大変でした。あれが最初に揃ったからこそ、開示の全体設計を前に進めることができましたよね。

鈴木:私自身は、情報量の多さに圧倒されたのが正直なところです。調べるほど情報は出てくるのに、「自分たちはどこまでやるべきなのか」という温度感が掴めなかった。他社を見ても開示の深度にはかなり差がありましたし、社内の誰に聞いても明確な答えがない。立ち上げ期の最も難しいポイントはそこでした。それでも、答えがないからこそ自分たちで切り拓いていく感覚があって、大変な中にも確かなやりがいがありました。
統合報告書からESGデータブックへ
ESGデータブックを新たに作成するに至った背景を教えてください。
東江:もともと投資家向けに統合報告書を発行していましたが、実際には採用の場面で参照されるケースが多く、ESG投資家への訴求という観点では活用のされ方にギャップがありました。また、ESG評価機関によるレーティングに対応するには、必要な情報を網羅的かつ構造化された形で出すことが重要だと判断し、ESGデータブックを新たに作成しました。



株式会社じげん ESG Data Book 2025(https://zigexn.co.jp/ir/integrated_report/)
こうした取り組みの成果は、どのように表れていますか。
東江: 最も大きな成果は、ESGレーティングの改善です。ESGファンドへの組み入れ実績も増えており、取り組み以前と比較すると着実に前進しているという実感があります。
鈴木:情報を一つに集約したことで、社内の運用面でも変化がありました。以前は必要な情報が社内のさまざまな場所に散在していましたが、「ここを見れば揃っている」という状態になり、レーティング対応の効率が格段に上がりました。
伊藤:グループ会社への説明もしやすくなりましたね。データブックを共有するだけで、何をどこに開示しているのかがすぐに伝わります。また、環境データの開示でご協力いただいた方から「開示資料を拝見しました」と連絡をいただくこともあり、社外の方に実際に目を通していただいているという手応えも感じています。
鈴木:大手企業の方と意見交換する場面でも、専門的な議論が対等にできるようになってきたと感じます。社外からきちんと見てもらえるようになったのも、この3年間の地道な積み重ねの成果だと思っています。
サステナビリティとは、「事業を持続的に成長させる力」。社内への浸透を目指して
社外からの評価が形になる一方で、課題もあるのでしょうか。
鈴木:社外では評価をいただけるようになった一方で、社内にはまだ十分に伝わっていないと感じています。「サステナビリティ」という言葉の印象に引きずられて、何か新しくてよく分からないもの、と捉えられているように思うんです。
でも本質はそうではなくて、サステナビリティとは「自分たちの事業を持続的に成長させるためにどうするか」ということだと捉えています。製造業のように環境に配慮した製品を作ることで消費者に選ばれるという構図は、プラットフォーム事業を展開する私たちにはそのまま当てはまりません。けれど、自分たちのサービスが社会にどんな価値を提供しているのか、消費者やクライアントとどのように繋がっているのかを見つめ直すことは、私たちだからこそできるサステナビリティの営みだと思っています。
伊藤:ESGの取り組みを俯瞰すると、株価、環境対応、人的資本、ガバナンス——どれか1つだけやればいいものではなく、総合的な視点が求められます。それはもはや経営そのものです。よく皆で話していたのが、「ESG対応は、これで突き抜けるというよりも、やらないことで選ばれなくなるもの」だということです。プロジェクトを通じて、メンバーそれぞれが経営的な視点に触れる機会になったことは、このプロジェクトの意義の一つだと感じています。
東江:ESG投資においては「ネガティブスクリーニング」、つまり最低限の基準を満たしていないと投資対象から外されるという仕組みや、「ESGインテグレーション」、つまり財務情報だけでなく、ESG要素も投資判断のプロセスに組み込み、総合的に評価する手法が主流です。その土台はしっかり構築できたと考えています。ここからは「選ばれるためにどうするか」というフェーズに入っていきます。

今後の目標についてもお聞かせください。
東江: IR的な視点では、ESGレーティングのさらなる向上が第一の目標です。客観的な評価の改善は、取り組みの成果が認められている証明にもなります。将来的には、ESGに関心を持つ投資家に対してこちらから積極的にアプローチしていくフェーズにも移行したいですね。
伊藤: 総務の観点からは、将来的なオフィス移転を見据えてサステナブルな環境づくりを意識していきたいです。現オフィスでは設備面の制約もありますが、できることから取り組む姿勢は変わりません。「E」以外の領域にも広げて、全従業員が日常の中で意識できるような取り組みにつなげていきたいと考えています。
鈴木: じげんはプラットフォーマーとしてさまざまな事業者と接点を持っています。ゆくゆくは取引先企業のサステナブルな取り組みを評価・発信していくような、じげんならではの推進の形も模索していきたいと考えています。また、一番の目標は、社内への浸透です。サステナビリティとは、自分たちのサービスや事業が社会とどう繋がっているのかを理解することでもあります。それが分かれば、一人ひとりの仕事のモチベーションにもなるはずです。
この2年間で、専門家がいない中から始め、仕組みとして定着するところまで持ってくることができました。年間のスケジュールやチェック項目、対応すべきフレームワークが整理され、メンバーが入れ替わっても回せる体制が出来上がっています。次はその意味と価値を、社内にしっかり届けていく番だと思っています。
