じげん産業医 尾林誉史先生に聞いたリモートワークのコツは「3つのオフ」
じげんでは、多様な社外のパートナーと協働し、事業や組織における様々な課題解決に柔軟に取り組んでいる。2014年よりじげんの産業医を務める尾林誉史先生もその1人。東京大学理学部化学科卒業後、株式会社リクルートを経て医師を志した異色のキャリアの持ち主だ。東京都立松沢病院にて臨床初期研修修了後、東京大学医学部附属病院精神神経科に所属。現在10社の企業で産業医を担当する他、今年5月に「VISION PARTNER メンタルクリニック四谷」を開院した。そんな尾林先生に、じげん含め多くの企業で定着しつつある新しい働き方ついて話を聞いた。産業医が説く、リモートワークを円滑に進めるための秘訣とは?
コロナ禍で働き方が一変、急激なオンライン化の波にあおられる企業
新型コロナの影響で、じげんでは4月から在宅勤務を基本とした働き方に切り替わりました。尾林先生の仕事にも影響はありましたか?
基本的に週2日は産業医の日として、担当している各社訪問の時間などに充てていたのですが、今は終日リモートでカウンセリング業務を行なっている状況です。早い企業では2月末から、4月頃には概ねどの企業にもリモート体制が本格導入されました。はじめは100%オンラインにできるのか、戸惑いはありましたね。
各社からも色々な話は聞いていて、採用活動に至るまですべてオンラインで完結しているところもあります。オンライン面談で採用された方は、そのまま在宅勤務でお仕事が始まるので、人間関係が構築しづらく心細い思いや不安を抱えられている方が多い傾向にありますね。
意識すべきは、「3つの密」ならぬ「3つのオフ」
リモートワークはメリットもある一方、新たな課題が多く浮き彫りになっています。在宅勤務やオンラインコミュニケーションを円滑に進めるための秘訣を教えてください。
基本的にリモートワークにおいては、「3つのオフ」を意識すると良いと考えています。
①「サインオフ」
②「静止画モードオフ」
③「オフライン」
いずれも日々のちょっとした心がけで取り入れることができ、リモートワークに限らずリアルでも活かせると思います。
「サインオフ」の時間を決めておく
在宅勤務になったことで、じげんでも仕事とプライベートの切り替えが難しいと感じている人が多くいます。上手くコントロールするコツはなんでしょうか?
家にいることでずっとプライベート気分になってしまうパターンもありますが、どちらかというとその逆が多く見られます。常に仕事モードになってしまうパターンですね。
各種オンラインツールで常時テンポよく連絡が取れる環境は便利な一方、いつまでも仕事をしてしまい、休まらない原因にもなります。いかにオフを作っていくかが、皆さんの実態には即しているように思います。
例えば、終業時間をあらかじめ決めておき、それ以降は「サインオフ」の状態にすること。私もはじめは仕事中に3歳と5歳の2人の子供に遊んで欲しいとせがまれていましたが、PCを置く部屋に鍵をかけ、19時までは仕事!と区切りをつけるようにしました。はじめこそ子供たちはドアの前で泣いていましたが、夜になれば遊んでくれるということが分かり、子供の中でもオンオフがつくようになりました。思い切りの良さは、この時期に得た福音ですね。
ついずるずると仕事を続けがちですが、決めた時間まではしっかりと集中し、その後は思い切って「サインオフ」に。メリハリをつけることで生活リズムが整い、ヘルシーな時間管理ができます。
オンラインMTGは「静止画モードオフ」を心がける
オンラインMTGが当たり前となりましたが、今までにないコミュニケーションの問題も生じています。気をつけるべき点はどこでしょうか?
オンラインミーティングは、ツールや通信の問題でタイムラグが生じて妙な間が空いてしまったり、例えが高画質でもリアルと比較して機微が圧倒的に読みづらかったりと、コミュニケーション不全が起きがちです。
そこで大事なのは、いつもよりリアクションを倍にすることです。これまで通りの相槌や頷きだけでは、画面を通すと伝わりづらく、聞き手はまるで「静止画」のようになってしまいます。
リアルで関係性がある方でさえ、話し手は「ちゃんと伝わっているかな?」とちょっとしたことで不安になります。「静止画モードオフ」を心がけ、仕草はいつもよりしっかりと、体を使って大きめに。相槌は、通常の3倍くらいの大きさがいいですね。「ふーん」や「へぇー」だけでなく、「分かる分かる」「大事だよね」と、相手の話を聞いた上でしっかりと受け止めていることを示しましょう。
多少オーバーと感じる反応のかけあいで、コミュニケーションが取れているという安心感が生まれ、オンラインミーティングがより温かみのあるものになります。
なるほど。オンラインで「顔が見えない設定」にすることについては、どうでしょうか?「顔出し必須」といったルールを会社として設けてもよいものですか?
顔を見せる・見せない問題は深く、これはコロナ以前からマスクがアリかナシかという相談をいただいていました。というのも、マスクが一種の仮面のような役割を果たし、つけることで自分を鼓舞し、発言が強くなる方がいらっしゃるからです。
この場合、衛生上の理由というよりは、顔を出しにくいからそうしているのであって、それを止めさせることは意見が真正面からぶつかることになります。
ルールで強制するのではなく、顔を隠したい心理を理解した上で、マネジメント側が率先して顔を出しやすい雰囲気や環境を作ることが大切です。引け目を感じることなく、誰もが顔を見せて議論しやすい空気感づくりに意識を向けましょう。
リモートマネジメントの肝は「オフライン」
リモートワークは、特にマネジメント層と現場社員とのやり取りにおいての課題をよく耳にします。そういった相談は多いでしょうか?
そうですね。上長の方から非常によく聞くお話が、「チャットやメッセンジャーで言いっぱなしにして後悔した」です。
テキストのみのコミュニケーションは感情が写りづらく、悪意がないと信じていても、受け手の現場社員が傷ついてしまうケースが多々あります。 忙しいとついテキストを送って済ませがちですが、重要な結論やアドバイスなど、節目節目においては電話や顔が見える形の「オフラインに近い状態」で伝えることを意識しましょう。息遣いや温度感、動きを見せることで、温度差や抑揚の無さ、ニュアンスの違いを解消できます。手間暇惜しまず、リアルに近いオフライン的コミュニケーションがポイントです。
活字とは本来、そこに横たわっている景色や感情はどんなものかを想像させるものです。オンライン時代だからこそ、文字だけが踊るこの伝え方で受け手はどう感じるか、発信する側が想像力を働かせることが大切ではないでしょうか。時間の効率に押し流されることも多いですが、今この期間に想像力を養い、感性を研ぎ澄ませることもおすすめです。こういったオンラインの場面でうまく立ち振舞える方は、リアルだともっと上手なはずです。
働くことは生きること、働く人のあらゆる悩みをサポートしていきたい
最後に、尾林先生が今後挑戦したいことについて、教えて下さい。
新しく開院した自分のクリニックですね。元々クリニック経営者になりたかったわけではなく、精神科医・産業医として働く方々と向き合う中でここにたどり着きました。働けるかぎりにおいては、働くことは生きることであり、尊いものと考えるようになりました。
従来通りメンタル不調もみていきますが、それだけでなく働く人のいろんな悩みをサポートし、情報提供できる場所になればと。キャリアカウンセリングの方と一緒の事業も考えています。
元気がある人でも立ち寄れるような、そんなこれまでにないクリニックにしたいですね。新しいことへの挑戦を楽しんでいきたいと思います。
VISION PARTNER メンタルクリニック四谷
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診療科目:
心療内科、精神科