じげんに転職した理由その2
※こちらの記事は、じげんコーポレートブログの記事を再編したものです。記事に記載されている名称などは、2016年8月13日当時のものとなります。本エピソードは当時のコーポレート責任者の執筆によるものとなります。
その1では、金融業界から離れることを決めた経緯をお書きしました。
その2、その3では、上場ベンチャーのじげんに行き着いた道筋をご紹介します。
転職エージェントやヘッドハンター、友人知人に色々な採用ポジションを紹介してもらう中で、私は3つの判断基準を持っていました。
まず、経営陣として幅広い業務を管掌できること。専門性、守備範囲を広げるために金融業界を離れるので、リサーチアナリストとして培った企業分析、株価分析、IR芸(?)だけではなく、M&Aやコーポレートファイナンス、できれば経営戦略全体も主導できる立場が望ましいと考えました。
次に、上場企業であること。そうは言っても自分は株式市場のプロとして活動していたので、強みが活かせると思いましたし、既にある程度の規模に達した組織の方が、社会に対してバリューを出せている可能性が高く、また、M&A等の戦略的なオプションも多いだろうと判断しました。
最後に、企業として高い志があること。誇りをもって働きたいですからね。
さて、私のキャリアパスで珍しいのは、あえて上場しているベンチャー企業に転じたことかと思います。
じげんに入社してから自分と似た経歴の採用候補者の方と面接をしていても、「なぜ未上場のスタートアップではなく上場企業を選んだのですか?」とよく聞かれます。
そこで下記に、転職先としての上場ベンチャーとスタートアップについて、一般論としてのメリットとデメリットを羅列してみました。
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・上場ベンチャー
○業界において一定の存在感があり、組織として社会へのインパクトが出しやすい。
○企業体の大きさゆえ、経営戦略や財務戦略として取り得る選択肢が多い。
○財務基盤、社会的地位、給与水準に係る安定性が高い。
×既に体制が確立している場合、個人として組織へのインパクトが出せない可能性がある。
×上場や企業/事業売却による一攫千金(持株のエグジット)が狙いづらい。
・スタートアップ
○体制が構築されていない場合が多く、個人として組織へのインパクトが出しやすい。
○相対的にしがらみが少ないため、柔軟かつ大胆な戦略が選択可能。
○ストックオプションが付与されれば、行使及び売却によるアップサイドが大きい。
×事業がスケールせず、組織として社会へのインパクトが残せないリスクがある。
×上場や企業/事業売却によるエグジットまで辿り着けないと経済的に高いリターンは望みづらい。
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上場ベンチャーのメリットについて補足しますと、例えば財務戦略に関しては、狭義のスタートアップCFOが担う役割というのは限定されていて、KPIの管理、ベンチャーキャピタルをはじめとする投資家からの資金調達、上場やM&Aの準備、報酬制度の設計といったところが主業務でしょう。
一方で上場企業のCFOや経理財務部門は、(当然、会社によって相当ばらつきがありますが)KPIや社内数値を取りまとめる管理会計、月次、四半期、年次の財務会計、開示対応はもちろん、プレーンなデットやエクイティに限らず、ハイブリッドであったりエキゾチックであったり、あらゆる資金調達手法から最善策を選択し、実行することができますし、対外的に業績や戦略に関する説明責任を果たし、不特定多数の投資家、金融機関と円滑なコミュニケーションを図る能力も重要となります。また、多様な資金調達手法が選択可能なことからM&Aにも積極姿勢がとりやすく、対象企業のデューデリジェンスや企業連結、資本提携の実務、及びM&A後のPMI戦略と、経理財務分野に限っても、解決すべき課題やそのために取れる選択肢が無数にあります。
この点が、専門性、守備範囲を広げたかった私にとって最大の魅力でした。
一方、上場ベンチャーにおいては、組織としては大きなこと、新しいことができるかもしれないが、体制が完成しており、上場後に転職しても高度な意思決定に関与できないのでは?とのご指摘、ご懸念もあろうかと思います。
しかし皆さんが想像されている以上に、じげんを含む上場ベンチャーは、良くも悪くもベンチャー企業のままです。時価総額数千億円のいわゆるメガベンチャーを除けば、基本的にベンチャー企業は急成長企業ですから、1年前、2年前と比べて常に戦線が拡大しており、初めて直面する課題に対して手探りで対応する泥臭い経営をしているはずです。よって、高い専門性を持つ人材、特に自力で戦略を立案し、戦術の実行まで落とし込める人材の活躍できる幅は広いです。
次回以降の記事に詳述しますが、私も入社前は、「リサーチアナリストが上場企業に飛び込んでも、一介のIR担当者としてしかバリューを出せないのではないか…?」と心配していましたが、全くの杞憂でした。
なお、経済的なリターンに関して、平均値は上場ベンチャー>スタートアップ、標準偏差はスタートアップ>>>上場ベンチャー、というのは、ほぼ事実でしょう。ただし、「既に上場しているからアップサイドが限られている」と決めつけるのは、先入観が強すぎるかもしれません。ここでは詳しくは触れませんが、世の中には色々なスキームがあります。
次回はいよいよ、数ある上場ベンチャーの中からじげんを選んだ理由を記します。