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じげんのIR

IRの真の目的とは《後編》

09.29.2021

※こちらの記事は、じげんコーポレートブログの記事を再編したものです。記事に記載されている名称などは、2016年7月25日当時のものとなります。

前編では、じげんの経営戦略部が担う主要業務の1つであるIR(Investor Relations)には3つの目的があり、特に、株価のボラティリティを抑制し、資本コストを最小化することが大切です、というお話をさせて頂きました。

さて、株式市場では、自社の存在感を示すことや株価評価を向上させることを目的に、実質的な経営や収益への影響が軽微であるにも関わらず、注目テーマに関与していることを必要以上にアピールしてしまう例が散見されます。

これを私は、「バズワードの誘惑」と呼んでいます。

バズワードと言えば、ごく最近ではやはりポケノミクスやVR、AR、その直前までは民泊やインバウンド、フィンテック、東京五輪といったところでしょうか。

他にも、「株式 テーマ 一覧」といったワードで検索すれば、たくさんのテーマやいわゆるテーマ株を確認することができます。

実は当社でも、過去には決算資料上でバズワードがふんだんに使用されていた時期がありました。新規事業の候補としてそれら分野への進出を検討していたことは事実ですが、正直に申し上げて、業績への影響は微々たるものでした。

当時の担当者いわく、株価評価がじりじりと下がるだけではなく、売買代金も細る中で、株式市場での存在感を盛り上げたかった、という事情があったようです。

確かに、IPO直後は様々なアナリストや投資家、メディアからの取材依頼が殺到し、売買代金も名だたる大企業並みの大商いが続いていたのに、上場から数ヶ月も経つと、特筆すべきニュースや業績がない限りは注目度が下がってしまって寂しい…、という声はIR担当者の方々からよく聞かれます。

また、特に新興市場では、オーナー経営者の持分比率が高い企業が多いため、経営者が株価に敏感となりがちで、IR担当者へのプレッシャーがきつい、という生々しい事情も耳にします。

しかし、バズワードを盛り込んだ刺激的な話題を提供し、一時的には株式市場を再び熱狂させることができたとしても、投資家は愚かではなく株式市場は効率的なため、中長期的な株価は実態の業績や成長性に見合った水準に収斂する可能性が高いのです。

もちろん、バズワードであろうとなかろうと、その新情報が本当に将来の企業価値向上に繋がるのであれば、それは中長期的な株価に反映されるはずです。

前職でアナリストとして、とある担当企業のCFOと議論をしていた際に、「結局は元通りになるとしても、しばらくバズワードで株価を上げておくことや、株価を上げようとする姿勢を投資家に示すことに、特に問題はないのではないか?」とのフィードバックを頂いたこともありますが、こうした考え方は明確な誤りと言ってよいでしょう。

まず、大多数の中長期投資家は、場当たり的な株価対策を評価しません。

また、株価水準は乱高下前後で変わらないとしても、乱高下によってボラティリティが上昇するため、それに基づく株式コストやWACCも上昇します。そして、将来キャッシュフローの割引率に適用されるWACCが高いほど、企業価値は減少します。

つまり、「バズワードの誘惑」に負けることは、企業価値を毀損してしまうリスクがあるのです。

当社が5月に公表した中期経営計画「Protostar」では、外部環境の説明箇所以外でのバズワードの使用を意図的に避けています。

今後もじげんは、正攻法かつ丁寧なコミュニケーションで株式市場と向き合っていきたいと考えています。


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