じげんに転職した理由その1
※こちらの記事は、じげんコーポレートブログの記事を再編したものです。記事に記載されている名称などは、2016年8月11日当時のものとなります。本エピソードは当時のコーポレート責任者の執筆によるものとなります。
私は2016年3月にじげんに入社するまで、リサーチアナリスト(セルサイドアナリスト)という職業に就いていました。
なかなか他に例がないキャリアパスのためか、公私を問わず、「なぜ金融業界を離れたのか?」「なぜスタートアップではなく上場ベンチャーなのか?」「なぜじげんなのか?」「実際入ってみてどうなのか?」といったご質問をいただくことが多々あります。
このシリーズでは、経験も踏まえながらこの辺りを綴ってみたいと思います。
まず、そもそもなぜ金融業界を離れたのか、という点に関して。
結論としては、ビジネスパーソンとしての守備範囲を広げたかったこと、企業価値最大化を自ら実践したかったこと、が理由です。
いずれも、証券会社や監査法人、コンサルティング会社、法律事務所といった、いわゆるプロフェッショナルファームの方々が事業会社に転じるベタな動機ですね。
1点目に関して、外資系証券会社(の日本拠点)では、守備範囲を絞っていち早く専門性を高める、という方向にキャリアが進みやすい傾向にあります。新卒採用の段階から部署別で選考が進みますし、入社後もジョブローテションという概念は基本的になく、同一企業内で部署を跨ぐ異動はかなり稀です。
私の場合も、新卒で不動産・REITを担当するリサーチチームのジュニアアナリストに配属されましたが、以降7年間、シニアアナリスト、チームヘッドと役職が変わったり、住宅や住設、建設にも担当業種が広がったりはしたものの、部署異動はおろか、チームの異動すらありませんでした。
特にセールスやトレーダー、リサーチアナリストはほとんど個人商店なので、社内に自分の専門性と競合する上司や同僚がおらず、運と実力に恵まれていれば、若くして役職や裁量権を手に入れることは難しくありません。
私も気付けば、20代でディレクターという日本の大企業で課長~部長代理に相当する役職に就き、結果を出してさえいれば誰にも指図されることのない立場になっていました。株式市場と対峙する日々の仕事はエキサイティングで遣り甲斐があり、良き同僚に囲まれ、待遇に不満もなく、極めて快適な環境でした。
しかし、守備範囲を絞って若くして裁量を持たせてもらう、というキャリアは、裏を返せば、ビジネスパーソンとしての将来的な広がりが阻害されやすい面も否めません。
例えば同業界を担当する競合同士の20代と50代のリサーチアナリストを比較すると、もちろん経験や能力は異なるものの、調査対象企業の経営陣や業界関係者との議論、及び財務諸表の分析結果等に基づいて株価予想、業績予想を伴うレポートを発行し、顧客である機関投資家に対してサービス提供を行う、という一連の業務は全く同じです。
個人的にリサーチアナリストの仕事は大好きでしたが、自社や他社の先輩を横目で見ながら、「自分はこれから数十年、同じ業務を続けるのだろうか?」という素朴な疑問が頭をもたげていたことも事実です。
プロフェッショナルゆえの守備範囲の狭さというのは、リサーチアナリストやインベストメントバンカーに限らず、弁護士や会計士、コンサルタントの皆さんも感じやすいフラストレーションではないでしょうか。
2点目に関して、単純にリサーチアナリストから職種を変えるのであれば、ヘッジファンド、投資信託会社といった機関投資家(バイサイド)や、同業他社の証券会社(セルサイド)で投資銀行やセールスといった他部署に転じるのが一般的です。同じ金融業界であれば、異職種であっても業務的にピボットしやすい、及び、所得水準が保たれることが多いためでしょう。
一方で私個人は、企業価値を図るリサーチアナリストの立場にあったことから、親子以上に歳の離れた上場企業の経営陣に対し、レポートや取材を通じて、生意気にも財務戦略や事業戦略について意見を述べさせて頂くこともありました。そんな中、ある日突然、強い買い推奨をしていながらなかなか株価が上がらない某銘柄のレポートを書きながら、2つの矛盾した考えが、なぜか同時に浮かびました。
「こんなに対象会社の企業価値の向上策を考え抜いているのだから、いっそ自分が経営に関与した方がよいのではないだろうか?」という極めて傲慢な考えと、「事業経験のない自分が偉そうに企業への提言をレポートに書くとは、何て恥ずかしいことだろう」という過度に卑屈な考えです。
いずれにしても、リサーチアナリストとして企業価値最大化のために立てた仮説を、組織の中に入り込んで実証したい、という思いは日に日に強まっていき、気付けばやけに心を弾ませながら、条件等は度外視で転職エージェントやヘッドハンター、友人知人に、事業会社への転身について相談していました。
こうして金融業界から離れることを決めた後、上場ベンチャーのじげんに行き着いた道筋について、次回以降に記します。