じげんの新組織・ライフサポートDivisionが目指す「生活機会の最大化」とは(前編)
2020年2月、M&Aによりじげんグループとなった株式会社アイアンドシー・クルーズ(以下、IACC)は、同年7月に新しい組織「ライフサポートDivision」として、じげん本社のライフメディアプラットフォーム事業本部に統合された。じげんグループに参画以来、事業をこれまで以上に大きく成長させ、推進し続けている。まだジョインして日も浅い彼らから見たじげんとは。
これまであまり語られるシーンのなかったM&Aの当事者の目線で、じげんの未来をどう共創していくのかを、IACCの創業メンバーかつ経営者の1人としてけん引し、じげんでは新設された「ライフサポートDivision」の部門責任者となった佐藤に聞いた。
サービスを通じて人々の「暮らしを支援する」新組織、ライフサポートDiv.とは
新たに新設された、ライフサポートDiv.について教えてください。
まず、IACCについてお話させていただくと、2008年に創業し、「次世代へ紡ぐ事業を創出する」というミッション、「Create Smart Life」というビジョンを掲げ、住生活を中心とした様々な事業を展開しておりました。リーマンショックの年に会社を立ち上げ、エネルギー領域を主事業にしていたため、東北の震災をきっかけに急成長し、スタートアップとして様々な表彰をいただくようになりました。
一方で、外部要因による一時的な急成長であると考えていたことから、常に分散多角化経営を意識していました。「事業開発」にこだわり、VCからも多額の資金を調達し、12年間で30事業以上の立ち上げ、統廃合を繰り返し現在に至ります。事業の中には、子会社を設立しスピンアウトした会社や、他社様に事業譲渡させていただき、今も運営されているサービスもあります。成長ベンチャー企業として、良い時も悪い時も両方経験し、外部環境に対して、変化し続けて成長してきた会社でした。
現在は総合リフォーム、外壁/屋根塗装、太陽光発電/蓄電池、プロパンガスの4つの市場にて、サービスを展開しています。
ビジネスモデルとしては、じげん社と同じ、プラットフォーム型のサービスを運営しており、住生活に課題を抱えるユーザーが、住生活の専門店を探すことができる機会を複数カテゴリーで、日本全国に展開しております。各カテゴリーにおいて、ユーザー数、加盟会社数ともに国内トップクラスの規模感で運営しているのが特徴です。
M&A先として、じげんを選択した理由
今回のM&Aに至るまで、どのような経緯がありましたか?
じげんのことは、昔からよく知っていました。代表の平尾は世代が近いこともあり昔から存じていましたし、2010年にはIACCとじげん社は、業務提携していた時期もあり、そのときの窓口がじげんの取締役でした。ビジネスモデルが近かったことから定期的に情報交換をする関係になり、段々と深いコミュニケーションをとる中で様々な議論を重ね、タイミングなど色々な要因が重なり、今回グループに参画することに至りました。
M&Aの話が具現化する中で、じげんに決めた理由はどのような点だったのでしょうか
どの企業様とご一緒させていただくべきか、様々な選択肢がある中で慎重に検討を進めていたのですが、最終的にじげんに決めました。決めた理由は大きく2つあります。
1つ目は、事業成長の観点です。ビジネスモデルが似ていたこともあり、じげんのことを長年ずっと参考にしていました。じげんは物凄いスピードで急成長し続けており、且つIACCよりも領域が多角化されていて、メディア事業におけるノウハウ、財務的なアセットも圧倒的に大きい。じげんと一緒になることで、IACCの顧客、ユーザーにとってより良い価値提供を早く提供できるのではないかと思いました。
2つ目は、IACCメンバーの成長、キャリアの観点です。IACCは「次世代へ紡ぐ事業を創出する」というミッション、「Create Smart Life」というビジョンに共感して参加したメンバー達がほとんどです。M&Aを行うことで全く別のカルチャーや価値観の会社になることは、経営者としての説明責任を彼らに対して果たすことができないと思っていました。
IACCの想いを紡いでいただけそうな企業様とご一緒することが、メンバーにとって納得感のあるM&Aになる。ハード面だけではなく、ソフトな面も高め合えるかどうかは、とても重要視していました。
じげんは「事業家集団」という精神があり、「生活機会の最大化」という理念を持っている点はとても親和性が高く、メンバーにとってIACCの延長線上になるのではないかと考えました。ビジネスモデルが近く、IACCよりも圧倒的に大きく事業を展開しているじげんで働くことはメンバーにとっても個々の成長とキャリアに繋がるという点は、他の企業様にはなかった点です。これはじげんでしか成せないことであり、M&Aを意思決定する上で大きな決め手となりました。
M&A発表直後のメンバーの皆さんの反応はいかがでしたか?
じげんが上場企業ということもあり、当然ながら事前にメンバーに伝えることができませんでした。じげんのプレスリリース発表後に、全メンバーを一同に会議室に集めて、創業代表から直接口頭で伝えました。メンバーにとっては、本当に突然のことだったと思いますので、ただただ驚いていて、状況がよくわからなく、全員が呆然と聞いていたと記憶しています。
社員の皆さんにお伝えするときに、どんなメッセージをされたのでしょうか。
M&Aをする理由、そしてなぜ、じげんを選んだのかについて、ありのままの思いを、全員に同じ内容を同時に伝えるようにしました。口頭でのメッセージだけでなく、当日に全員に対してメールでも発信しました。メンバー1人ひとりの人生に影響を与える大きなことだと認識していましたので、情報差分が出ないことや誤った伝達が起きないことに気を遣いました。
そしてなによりも、「経営陣が変わる」「独立ベンチャーから、上場企業の子会社になる」という変化に対して悲観的に捉えるのではなく、会社やメンバーにとっての成長する機会と捉えてほしいということを、強く何度も伝えるようにしました。
佐藤さんはメンバーから非常に信頼されている印象を受けました。社員のみなさんとコミュニケーションするにあたってこれまで気を付けておられたことは何ですか?
正直、そんなに信頼を集めていると思っていませんし、特別な何かをしていることは本当にありません(笑)。ライフサポートDivision(以下ライフサポートDiv.)に在籍するメンバーのほぼ全員の採用に私は関わっていますし、事業管掌の役員(COO)だったということもあり、単純にメンバーと接する機会が物理的に多かったので、そう見えているだけではないかと思います。
今回のM&Aを経て、気を付けているという点を挙げるならば、私自身が誰よりも変化を受け入れて、楽しもうとしていることでしょうか。先ほどもお伝えしたように、今回のM&Aをメンバー1人ひとりにとって、成長の機会と捉えてほしいと心から思っています。
とはいえ、新しい環境は誰もが不安なものです。それは私自身も同じことですが、私自身が率先して変化を受け入れ適応し、パフォーマンスを発揮することが、ライフサポートDiv.のメンバーにとっての安心材料になることだと思っています。逆に変化に対する姿勢が、中途半端だとメンバーを不安にさせてしまいます。メンバーが今回のM&Aをいつか振り返った時に「良い機会だった」と言ってもらえるように、できる限りのことをしたいと常に思っています。
「やり切れなかった」想いを、「やり続ける」ことで昇華させていく
M&Aを機に退任する決断もできたかと思いますが、残られた理由を教えてください。
色々あるのですが、まずは、M&Aの意思決定をした当事者としての「責任」です。IACCは小さいとはいえ、約80名のメンバーが在籍していました。じげんの過去のM&Aから比較しても人数規模ではとても大きいM&Aだったと思います。さらに、本社への吸収合併という難しさも重なりました。IACC創業メンバーとして過去の歴史を知り、COOという事業責任者でもありましたので、M&Aから統合までのプロセスは私にしか成せない「責任」があると思っていました。
ここからは私個人のお話になりますが、IACCの事業や組織への心残りと自分自身の成長のためというのも理由のひとつです。
IACCの事業や組織を完全に「やり切った」上でのM&Aではなく、まだまだこれから伸びていていくという志半ばでのM&Aとなったため、やり切れなかった想いが残った状態でした。自分が立ち上げた事業、採用した人財に対しての可能性の大きさを誰よりも私自身が感じていましたし、信じています。会社が変わろうとも、自分自身の手でこの事業や組織を成長させたい、見届けたいという想いがありました。IACCという事業や組織に対して可能性を感じつつ、長年COOという役割をいただきながら、私自身の不甲斐なさや能力不足から、創業代表や株主に対して思い描くようなスピードで会社を成長させることができなかった申し訳ない気持ちや反省がありました。
一方で、じげんは外から見ていても信じられないような非連続の成長を遂げており、「なぜこんなに成長し続けられるのか」とずっと思っていました。私自身が足りないもの、見えていなかったものの「差分」をじげんに残ることで埋められるのでははないか、自分自身の成長の壁を越える機会ではないのか、と考えました。
まだまだ短期間の間で勉強させていただいている途中ではありますが、今回の機会を成長のチャンスと捉えてその「差分」を埋めていければと思っています。
後編では、佐藤が捉え始めている「差分」について、その差分を象徴する「じげんの事業家スピリット」について語ります。