課題解決のための選択肢としてM&Aを選んだ、オーサムエージェントが目指す物流業界のカタチ(後編)
2022年、11月よりじげんグループにジョインした株式会社オーサムエージェント(以下オーサムエージェント)は、運送業に特化した求人メディアサービス「ドラピタ」を主軸に、物流業界の「人」に関する課題解決に取り組んできた。
後編は、オーサムエージェントの取締役を務める代田も交えて、M&Aの決め手や、オーサムエージェントが描くこれからの道筋について話を聞いた。
(前編はこちらから。)
信頼感の決め手は、業界理解の深さと効果に向き合う真摯なスタンス
代田さんは、オーサムエージェントの取締役としてどんな役割を担っているのでしょうか。
代田:私は主に事業側というよりは管理側をサポートするような形をとっています。私自身はじげんグループ会社(三光アド・BizMo)の代表を務めており、じげんグループとしてのガバナンス、実績報告といった連携業務を主に担っています。
もともと営業出身で、正直に言うとそういった守りの部分は得意とはいえないのですが、竹村とはあえて役割や組織上の立場をしっかりと切り分けています。竹村は業界知識も豊富で彼自身がアイデアマンでもあります。事業を大きく伸ばすためにチームを引っ張っていくことに集中してもらおうと思い、そういった役割分担にしました。
じげんグループにジョインするまでのストーリーを聞かせてください。
代田:M&Aはじっくり時間をかけて何度もお会いするケースの方が多いと思うのですが、今回は短期集中でしたね。M&A後の成長ストーリーを創っていくところから、竹村と顔を合わせるようになりましたが、業界の慣習やマーケットの情報はもちろん、定量化されていなかった会社の実態を数字で表現してもらったり、かなり協力してもらいました。非常に短い期間でしたが、竹村自身が今回のM&Aをポジティブに捉えてくれていたことと、業界への理解が深いので推し進めることができました。
M&Aプロジェクトを進める中で、代田さんはオーサムエージェントのどんなところに魅力を感じたのでしょうか。
代田:まず、サービス自体がマーケットフィットしている所でしょうか。私も人材業界を20年以上やっていますが、それでもやり切れていないなと感じる部分は多々あります。オーサムエージェントのサービスは「ドラピタ」をはじめ、業界にしっかりと根付き、他社を圧倒する効果を出せている。そこが本当に魅力的だと感じています。
オーサムエージェントが信頼されているのはその真摯な制作力。竹村が「求人広告屋」としての土台を崩さず、彼が培った制作力をしっかりとメンバーに継承し、会社全体で効果に向き合っている。そこにお客さまも期待して下さっていると思いますし、その真摯なスタンスが「2024年問題」を代表するような業界課題の解決につながっていると信じられるのは、希望が持てると思いました。
一方で、その強みでもある制作力は時にはコストとして捉えられます。じげんと一緒になることで、その大切にしてきたものを守りながら効率化を図っていき、生産性の高い仕事に変えていきたいと考えています。
M&Aの決断を後押ししたのは、「経営者としてのリスキリング」だった
竹村さんがM&Aの相手にじげんを選ばれた理由を教えて頂けますか。
竹村:M&Aをしようと決断したのにはふたつ理由があります。
ひとつめはビジネスへの興味という部分に近いかもしれません。ビジネスマンとして、30代前半で億単位のプロジェクトを動かせる経験を人生の早いうちに経験したかった。そしてもうひとつは、自分が作ったサービスをもっと大きく伸ばしていきたいと思ったからです。
「2024年問題」は、物流大変革時代と言われていて、これは我々からするとチャンスなんです。労働時間は圧縮されますが、荷物の数は変わらない。つまり、人を今まで以上に確保しなければならなくなります。「人」を扱う私たちの出番なんです。この問題が出てきたときから、「これはオーサムエージェントにとってチャンスになるはず」と思う一方で、自分たちだけではなかなかアクセルを踏むことができませんでした。
2020年~2022年のコロナ時に、物流業界もかなり影響を受けました。自動車工場や電子メーカーも工場がストップしたり、外食の配送も同様です。個人宅への配送は増えましたが、法人の物流がストップしたことは大きな痛手で、もちろん我々の業績も悪化しました。そこで私たち自身も、とても慎重になっていたんです。そんな時にM&Aが選択肢として現れ、「譲渡した方がより良い方向に事業を進めていける」と決断しました。
じげんグループは「リジョブ」や「タイズ」のように、専門的な職種にフォーカスした求人サービスを持っており、いずれもじげんグループジョイン後により業績を伸ばしています。親和性を感じましたし、自分たちがつくったサービスの可能性が広がると思いました。私自身、今までセールスを主にやってきていますので、デジタルマーケティング界隈の知見も未熟です。グループにジョインすることで「正しい経営」と「正しい知識」を平尾や経営陣から学び、私も経営者として成長できるのではと希望が持てました。
実際にじげんにジョインされて、半年ほど経過しましたがいかがですか。
竹村:代表の仕事は想像を超えてくるほど増えましたね(笑)。でも、とても勉強になっています。
事業計画にしても、「これがちゃんとした中期経営計画なんだ!」と勉強させてもらいましたし、守りの部分、コーポレートの体制づくりについても代田とじげんの皆さんにサポートしてもらいながら整えています。メンバーはまだそこまで変化を感じられていないかもしれませんが、私自身はこの選択をして非常によかったと思っています。自分自身が経営者としてリスキリングできているなと日々実感しています。
計画の立て方や目標設計もそうですが、リカバリープランの速さがじげんはすごいなと思いました。大きな組織でありながら、スタイルやスピード感がオーサムエージェント時代と同じぐらいの速度でできているので、そこにストレスを感じることはありませんね。
代田:ベンチャーらしい勢いは残しつつも、上場企業としてのガバナンスも意識した組織体制に整えていくフェーズです。社内的なところでは、自分たちの仕事や成果はしっかりと数字で表現する、ガバナンス体制を含めて守りの部分もこれまでのやり方からは変えていくといったアクションをとっています。
対外的な部分でも「1人の営業マンが、お客さまのために全て何でもやる」という属人的な体制から、CSチームや新規開拓チームをつくり、「それぞれが自分の役割をしっかりと全うする」体制にシフトしています。これまでの「真摯に効果に向き合う姿勢」をより強固にできればと考えています。
物流ドライバーを「子供たちの憧れの仕事」にするために
先ほど話題に出た「2024年問題」も含めて、今後オーサムエージェントはどんな道筋を描いておられますか。
竹村:業界としては「人を増やす」か、「仕事を減らす」か、どちらかの選択を迫られているような状況だと思います。物流企業の荷物単価はそう簡単に上げられない風潮なので、人を増やせばその企業の利益率は下がってしまいます。利益率を担保するためには効率化を図り、利益を守る仕組みをつくっていく必要があります。そういった課題を抱えるお客さまに、私達が価値提供できることは、やはり「人」です。
その物流会社にとって最適な人材を配置できれば、生産性は格段に上がってきます。そのために、本質的なベストマッチングを追求していくことが、我々がまずやるべき仕事であり、使命だと思っています。
その他に、これまでこの業界の採用マーケットにいなかった方々…例えば若い方や女性の選択肢として「物流業界」がもっと広がっていく流れをつくりたいです。そのためには業界のイメージを変える必要があると考えています。物流はどうしても泥臭いイメージが強いですが、そこを「カッコいい」イメージに変えて、デジタルネイティブの若年層が物流会社に入ってくる仕組みを、私たちでつくっていきたいと考えています。
「ドラピタ」をホームページ代わりに使ってもらいながら、会社の魅力を発信したり、若年層にフォーカスした記事をつくって、「物流業界って、ドライバーの仕事ってこんなに面白い」というメッセージは発信していきたいなと思っています。
物流ドライバーを、「子供たちの憧れの仕事」にしていきたいですね。