アップルワールドのTRAVELISTチームがコロナ禍で仕込み続けた「魂を込めた事業」とは
じげんグループで唯一の、旅行事業を展開する「アップルワールド」。コロナ禍における事業への影響は思ったよりも深く、長いものだった。2022年から徐々に「ウィズ・コロナ」の流れは高まり、17期1Qに見事、黒字転換を成し遂げる。
今回はアップルワールドが運営する、格安航空券・LCCの簡単比較・予約サイト「TRAVELIST(トラベリスト)」チームの2人に話を聞いた。
じげんに新卒入社をし、アップルワールドに選任出向している鴨下と、エンジニアの下地(しもじ)に、どんな気持ちで事業と向き合いつづけた2年間だったのか。一度リセットされたといっても過言ではない、今後の旅行事業をどう捉えているのか話を聞いた。
コロナ禍の影響を受け始めたタイミングでアップルワールドにジョインした2人
1QのV字回復、おめでとうございます。まずは皆さんのお仕事内容・TRAVELISTのチーム体制について教えてください。
鴨下:ありがとうございます。私はじげんの新卒として入社し、2021年よりアップルワールドに出向しています。
職種としてはプロダクトマネージャーをしており、具体的な業務内容は大きく3つを担当しています。
① 事業企画…どんな事業をやっていくか、中期計画、予算・実績・数値の管理
② プロダクトマネジメント…どういうサービスを設計していくかのサービス設計、施策検討など
③ WEBマーケの業務 つくったサービスを一般層に届けるための接点づくり、広告施策をはじめとするデジタルマーケティング
下地:私はシステムマネジメント部門に所属しており、主にフロントエンジニアとしてコーディング作業などを行っています。TRAVELISTのコーディングや、アプリのリニューアル 作成・保守運営などサービスづくり全般を鴨下や、デザイナーと連携しながら仕事をしています。
鴨下:コアメンバーとしては、私と下地に加えて、カスタマーサクセス(以下CS)部門の人間と、エンジニアが1名、代表の深田を含め6名ですね。
下地は2020年後半、私は2021年前半からジョインして、そこからコロナ禍と共に一丸となってサービスに向き合ってきました。
鴨下さんは、以前じげんの自動車事業に携わっていましたよね。
鴨下:インターン時代から出向するまでは、じげんの自動車事業部とTCVを担当していました。
出向開始当初は、旅行業界は未経験だったため、業界構造や業界の慣習などの理解には苦戦しました。状況も状況なので、領域理解にもスピード感を求められますので、社内の色んな人に話を聞きまわったり、アップルワールドの取締役の営業同行させてもらったり、現場の温度感や携わる人たちの思いを、頭だけではなく手足を使って集めていきました。
お話しできる範囲で構わないので、この2年を振り返って一番辛かったのはどんなときか聞かせてもらえますか。
下地:私は2020年に入社後、数か月じげんに出向していたんです。
出向解除となり、アップルワールドに戻ったときに人が減っていて。私と同じようにグループ会社に出向していたり、一部休業したりとさまざまですが、その時が1番辛かったですね。
鴨下:私もそうですね、下地が言うような状況を見ているのも辛かったですし、出口が見えない状況でも全速力で走らなくてはいけないことも辛く感じていました。
「2021年中にコロナは明けるだろう、」と言われても戻らない。マーケットの状況が行っては戻りを繰り返す中で、「どこを向いていけば良いのか」と思い悩んでしまうこともありました。
どれだけ辛い状況でも、支えになったのは仲間たちのプロフェッショナルな仕事だった
そういった辛い状況が続くと、他社・他領域のビジネスが羨ましく見えてきたりはしませんでしたか?
鴨下:一度も頭をよぎったことがないと言えば、嘘になります。(笑)
当時、自分はまだ新卒2年目。大した実績もなく、辞めたほうが後悔すると思ったんです。「ここで逃げると逃げ癖がついてしまう。」と。もし辞めるんだったら、強烈な爪痕は残した方がカッコいいじゃないですか。
下地:エンジニアの大久保が率いる、チームとしての空気、互いへのリスペクトからの居心地の良さは大きな理由のひとつです。もちろん、鴨下が抱えるような思いは当時みんなあったと思いますが、そんな中でも「コロナ禍が明けたあとのビジョン」もチーム内で描くことができていたので、「ビジョンに向けて邁進したい」と思えたんですよね。
鴨下:下地が言うように、「コロナ禍が明けたあと」のことを考えた時に、むしろポジティブなイメージしか持てなかったんです。
技術力が高いメンバーが集まったエンジニアチーム、旅行事業への深い知見があるCSチームはそろっている。ここに自分が入って、マーケティングと事業を推進すれば、コロナ前よりも絶対に伸ばせるはずと。
当時の私は何も結果を残せてはいなかったのですが(笑)、周囲の人のプロフェッショナルな仕事だけは自信があって、前を向かせてもらえました。
アップルワールドの強みについて、皆さんが自覚される機会になったんですね。 「アフター・コロナのビジョン」について話がありましたが、そのビジョン共有は頻繁にされていたのでしょうか?
鴨下:そうですね。週1回のマネージャー会も、月1回の全社会でも経営陣からずっとメッセージは出してくれていましたし、マネージャーに対しては「負の芽についての疑問」を投げかけて、考えさせる機会をつくってくれていました。経営陣、マネージャー、メンバーへと良い循環でメッセージが広がっていったと思います。
辛い時期ほど、経営陣が社員とのコミュニケーションを怠らなかったのが印象的でした。現場感を非常に大切にしている組織だと思います。
一喜一憂しないことを決め、「戦闘力」を上げることに注力した2年間
組織内で前を向き始めてから、皆さんそれぞれコロナ禍のマーケットと向き合っていましたか。
鴨下:マーケットの状況に一喜一憂してもしょうがないなと。ある意味諦めがつきました。
マーケットが変わらない中で、少しの数字を伸ばすために頭をこねくり回すよりも、「コロナ禍が明けた時に競争力を上げる」ことを目標に掲げました。
需要が戻れば、業績に関しては伸ばすことができる。沈んでいるときにほど、できることはあるはずだと思いました。
下地:そのときに、「サービス運営のDX」を社内で推進しました。
アプリをリニューアルし、コロナ禍前よりもユーザービリティを改善したり、社内業務も自動化できるところは自動化してCSにも貢献する。といったことを行いました。
旅行は万人にとって必要不可欠なものではない、それでも必要としてくれている人たちのためにサービスを成長させたい
皆さんのそういった準備の積み重ねが、今回V字回復を生み出したんですね。
鴨下:丁寧に分析を重ね、エンジニア・CSそれぞれの工程を担う人と密にコミュニケーションをとり、運営DXを推進させてきたことが、業績の回復につながったと考えています。
サイトもアプリも以前より使いやすくし、裏側の効率化もできました。社内のオペレーション効率も上げ、「戦闘力」となるものをチームで用意してきたので、あとはマーケットが動くのを待つ状況でした。無事に成果に繋がりホッとしていますし、このままいけば更に飛躍的な成長ができると確信しています。とはいえ、マーケットが今後どうなっていくかは私たちも読み切れない部分がありますので、油断はできません。
集客がうまくいけばいくほど、人を増やさないといけませんので、アクセルをどこまで踏んで、どこまでとどまるかをち密に計算することは、コロナ禍でも今の状況でも変わらず慎重に進めています。心持ちとしては、ようやく歯車が合ってきたという感覚です。
下地:正しい言い方ではないかもしれませんが、今は「ユーザーの皆さんも、コロナ禍に慣れた」という感覚は持っています。
本格的に「ウィズ・コロナ」になってきた流れを読み取るタイミングは良かったと感じていますね。
旅行は「生命・健康を維持する」という条件の中では、必要なものではありません。
ですが、旅行に行くことで得られる、「心の豊かさ」が必要とする人はたくさんいらっしゃることは今回のコロナ禍ではよく分かりました。そういった人たちがどんな人で、日頃どんな行動をしているのか、「旅行が自分の人生で必要」と考えておられる方とエンゲージメントを高めるために、「なぜTRAVELISTを利用してくれているのか?」を今後も丁寧に分析して、サービスを通じたユーザーさんとのコミュニケーションをより密にしていきたいなと思います。
鴨下さんは、今回の功績が認められてじげんのMVPにも選ばれましたね。
本当に、周りの皆さんに支えてもらっての受賞なので、チームの受賞だと思っています。
私はまだ新卒3年目で人間的にもまだまだ未熟で、出向当初はうまく自分のやりたいことが伝えきれないことが多かったんです。小さなエラーは社内でもたくさんありましたし、全然今でもあると思います(笑)。
でも、「魂を込めて仕事をする」ということが、どんなことなのか?を頭だけではなく、全身を使って学ぶことが出来ました。苦しい2年半でしたが、苦しかったこそ見えてきたものも多かったです。決して悪いことばかりではありませんでした。
最後に、皆さんのこれからへの意気込みを是非お聞かせください。
鴨下:TRAVELISTはBtoCのビジネスモデルで競合が多く、差別化が難しい部分はありますが、今はスタート台に立ったくらいだと捉えていて、まだまだより良い方向にサービスを向けていくことはできますし、終わりなき戦いかなと思っています。コロナ禍を経て、TRAVELISTが「揺らがないサービス」に成長させていきたいです。
ユーザーの皆さんがTRAVELISTへ訪れたキッカケが、「たまたま見た」「広告に挙がってきた」などでも私たちは良いと思っていて、「一見さんサービス」で終わらせないことが今後の目標です。
飛行機で移動するときにはまず、「TRAVELISTを一旦見てみよう」と思ってもらえる存在になっていきたいですね。
下地:まだまだプロダクトとしても「スタートラインに立っただけ」と考えています。
旅行アプリとして、まだまだ搭載する機能はたくさんあります。他社との差分を埋めながら、丁寧にユーザーと向き合い、プロダクトに魂を込めて、成長させていきたいですね。