10周年を迎えたリジョブが次に挑む、業界貢献の先にある社会貢献(後編)
じげんグループの中でも、とりわけ高い社会貢献意識を持っている株式会社リジョブ(以下、リジョブ)。
前編では、2014年のじげんとのM&Aによって代表取締役社長に就任した鈴木一平が、リジョブ創業メンバーで取締役の長南岳彦とともにM&Aのことや当時から続く徹底した組織創りについて語った。後編では、創業10周年を迎えて新たな挑戦する取り組みやリジョブが向き合い続ける業界貢献について深掘りする。
リザービアとのM&Aで期待する貢献の幅
2019年末には、サロン向けWeb予約システムを運営する株式会社リザービアをM&Aされています。ビジネス面では、どのような変化を期待していますか?
鈴木:これまで、我々のサービスでは「働くスタッフをサロン様に紹介して採用していただくこと」がゴールでした。でもサロン様としては「スタッフがお客様の施術を重ねてどう世の中にサービス提供という貢献ができるのか」がゴールです。採用の先の支援がリジョブのプロダクトだけでは難しかったことに対し、これまで歯がゆい思いがありました。リザービアが向き合う領域もカバーすることで、世の中への貢献の幅を広げたいと思っています。
組織の変化についてはどうでしょう。
鈴木:まだ手探りですが、じげんがカルチャーの違うリジョブを尊重していたように、リザービアならではのカルチャーを大事にしたいです。オフィスも向き合っているお客様も同じだからこそ、重なり合うところと分けるところを、時間をかけて見極めることが大事になってくると思います。
長南:逆に僕らは経験上、リザービア側の気持ちがわかる強みはあります。同じ顧客に異なるサービスを提供しているけれども業界に対する目標やベクトルは同じなので、シナジーを期待したい。押し付けることなく、でも無理に切り分けず、一緒になる部分をもって双方が力を発揮する組織創りをしたいですね。
リジョブが見据える“社会貢献”とは
もともと「咲くらプロジェクト」などの社会性の高いCSV推進プロジェクトをなされているリジョブですが、このたびじげんグループとしてはいち早くSDGsへの取り組みを発表されました。お二人が考える“社会貢献”とは?どういったものでしょうか?
鈴木:我々は、業界貢献の先に社会貢献があると思っています。広すぎる“社会”というレイヤーではなく、“業界”というレイヤーに落とし込まないと見えない課題があるからです。労働者不足も業界ごとに違うのだから、ミクロな業界のレベルに落とし込んだら見えてくるものがあります。フィリピンの貧困層の方々の経済的な自立支援につながるように、「セラピストとして手に職を付けていただく養成講座」を無償で運営する「咲くらプロジェクト」も、彼らではなく就職先企業からお金をもらえば事業になるんじゃないかというチャレンジです。株式会社として、利益も得て価値を提供することで向き合える社会貢献がある。そうして付加価値を提供していることを堂々と話せるくらい私たちは向き合いたいですし、どこかが成功事例を創っていけば他の企業が影響力も資本も持って向き合えるかもしれません。そのきっかけを私たちが創りたいですね。
長南:既存事業のピボットや新規事業の種を考える上では、やはり「持続可能なのか」という疑問を投げかけ続けることにつきると思いますね。ビジネスでの解決とは、結局は一時的なバラマキで終わらせるのではなく、自分たちの力で地に足をつけた上で恒常的に行い続けることが大事だぞと。続くということはつまり、ニーズを掴んだ良いスキームということになりますから、そういう持続可能性は何よりも軸として持っていきたいですよね。
鈴木:事業は売上だけでなく、社会貢献指標におきかえることも同じくらい大事だと思っています。リジョブにおいても契約社数はもちろん大事ですが、本質的な提供価値は採用していただいた数です。売上最上位だと、立てようと思えば本質的価値とズレたやり方で売上を立てられてしまいますよね。優劣をつけるのではなく、両方を同じレベル感で大事にしたい。どんな会社も、規模が大きくなるほど社会性は求められていきます。だからこそ、社会貢献指標を数字やストーリーで見せていくことも大事になります。例えばエクセル上では「1」としかカウントされない数であっても、自分たちが生みだしたたった「1」の数値に、その人の人生や思いがどれほど詰まっているか。そうした売上だけでは見えないストーリーを見せていくことで皆も「何のために自分たちが頑張れるのか」「誰が喜んでくれるのか」を実感できるのではないかと思っています。
提供サービスだけではなく、社内も心の豊かさが醸成されるように
リジョブの10年後、20年後のビジョンがあれば教えてください。
鈴木:リジョブではビジョンではなく、ソーシャルビジョンとして「人と人との結び目を世界中で増やし、心の豊かさあふれる社会を創る」と掲げています。実はこの“心の豊かさ”については、実感値がつい最近までありませんでした。でも先日10周年を迎えた時に、これだけのメンバーが集まって顔と顔を向き合わせながら、空気や喜怒哀楽を一緒に感じてお祝いできたということで心の豊かさが醸成された気がしたんですね。世の中に貢献するためには苦しいこともあるけれども、皆が目標に向かって頑張って来られたことを称え合う。リジョブはそういうことを感じ続けられる会社でありたい、と強く思いました。
長南:私もM&Aで進退を考えた時に、「やっぱりこのメンバーと喜びを分かち合いたい」という気持ちがすごく強かったですよ。
鈴木:やっぱり一人でやっていてもつまらないですからね(笑)。
写真(オフィス) = 森石 風太(Nacása& Partners Inc. )
取材 / 文 = 秋山悠紀
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